従来の小売業はシーズンごとに在庫を仕入れ、高い家賃と人件費を調整しながら商品を販売して粗利を稼ぐ損益計算書(PL)をベースにした戦術。
一方無駄な在庫を抱えずに売上より利益を稼ぐことにフォーカスし、持てる資産やテクノロジーを活用してできるだけ固定費をかけずに利益を残す。
貸借対照表(BS)で考えている企業が勝ち続けている。
例えば、無駄な在庫を抱えないサプライチェーンマネジメント(ZARA)、リードタイムの短縮(SHEIN)、効率的なフルフィルメント(ZOZO)、持続可能なフランチャイズ方式(ワークマン)、更新率に支えられた有料会員制小売業(COSTCO)、ブランド価値を高め続けるM&A(LVMH)、売上高よりフィンテックの収益性(丸井グループ)、売り手と買い手をCtoCでつなぐマッチング(メルカリ)、地域経済を活性化するラストマイル物流(DoorDash)、そして未来のサーキュラーエコノミ-に向けての先行投資(ZARA他)
ZARA
世界アパレル専門店売上ランキングで2009年以来世界一の座に君臨し続けるZARAを展開するインディテックス。
世界的なパンデミックに見舞われた2020年度を除いて常に15%以上の営業利益率、年平均約11%の増収、同11%の増益を続けている。
ファッション性の高いアパレル販売の難しいところは季節の移り変わりと流行の変化によって今売れている商品が1か月後、2か月後にもそのまま売れ続けるとは限らない。
ZARAは見込みで店頭に並べる必要最小限(販売約3週間分)の在庫をつくる。
そして店頭に並べた商品を見た顧客の反応に基づき必要最小限な分だけ高速で商品を作り足す。
需要連動生産をシーズン中に数回繰り返すことで不要な在庫を作りすぎず、トレンドファッションの過剰在庫のリスクを回避している。
単純に安価なコストだけを求めて、遠いところで長いリードタイムをかけて大量生産をすることは販売期間が短いファッション商品には大きな在庫リスクが伴う。
在庫日数
在庫をどれだけ持っているかを判断する経営指標の1つに在庫日数がある。
$$在庫日数=\frac{在庫原価}{1日あたりの売上原価}$$
内製化とアウトソーシング
自動車業界では受注生産を行っている。
部品メーカー各社にパーツの在庫を持っておいてもらい、受注に合わせて組み立て工場に納品してもらえるように契約している。
完成品の在庫リスクはなく、なおかつ短期間で納車できる。
パソコン業界のDELLもあらかじめ必要な組み立て用パーツを用意しておいて顧客から注文が入ったものだけを生産している。
内製化は設備投資の資金がかかるが、自社にとって都合の良いように流れをデザインし、効率よく運用することでより制御がしやすくなり、スピードを高めることができる。
内製化とアウトソーシングの違いは貸借対照表(BS)の資産の有形固定資産に表れます。
有形固定資産は土地建物、店舗内装、機械設備などでインディテックスは店舗以外に内製化したサプライチェーン施設に投資しています。
2022年1月期のインディテックスの有形固定資産は約9670億円、売上高に対して26%相当の資産を保有している。
一方、アウトソーシング主義のファーストリテイリングの有形固定資産は2022年8月期で1680億円
インディテックスは2014年度から2016年度にかけてスクラップ&ビルドによる店舗の大型化と消費者購買行動の変化に対応するための店舗とオンラインの統合プロジェクトに投資を行った。その結果2019年度には過去最大の営業キャッシュフローを生んでいる。